「築30年以上の物件でも、価値は引き出せる」 不動産の潜在的価値を“顕在化”させるレーサムの戦略

近年、日本の不動産市場では、資産価値を最大化するための工夫が注目されていることをご存知だろうか。

株式会社レーサムは不動産の潜在的な価値を見出し、不動産を変化させることで顧客に新たな投資価値を提供する企業として存在感を発揮している。同社の独自のアプローチや理念について、代表取締役社長の小町剛氏に話を聞いた。

代表者経歴

代表取締役社長

小町 剛

Tsuyoshi Komachi

  • 1996年04月 (株)三和銀行(現(㈱三菱UFJ銀行)入行
  • 2005年03月 同社入社
  • 2006年07月 同社社長室長
  • 2007年11月 同社常務取締役経営企画ユニット長兼社長室長
  • 2009年03月 同社常務取締役管理本部長
  • 2011年09月 同社常務取締役戦略投資本部長
  • 2017年04月 同社常務取締役社長室長
  • 2018年06月 同社代表取締役社長(現任)

あらゆる投資のなかで、不動産投資の強みは「資産の保全性」と「安定した収益性」

レーサムの主な顧客層は、裕福層を中心とした個人投資家である。同社が特に重視するのは「資産の保全性」と「安定した収益性」だ。
「お客様が不動産を購入される理由の一つは、安定した収益を得られると同時に資産価値を守れるからです。例えば、株式投資は配当利回りが高くても、企業の破綻などで価値が急激に下がるリスクがあります。しかし、不動産は『物』として存在し続ける特性があり、土地及び建物そのものの価値も失われにくいのです」

築110年超のオフィスビルを再生し、賃料の水準を大幅に引き上げた

レーサムの大きな特徴は、不動産の潜在的な価値を見出し、それを顕在化させる手法にある。同社は築30年以上の物件を積極的に購入し、その価値を高める取り組みを行っている。都心部には築30年以上のオフィスビルが多いが、その中でも「まだ価値を引き出せる物件」を見極め、再生させている。

「日本では築30年以上の物件に融資をする銀行が少ないため、これらの物件は市場価値が低いと見なされがちです。しかし、私たちはその中から潜在的な価値を持つ物件を見つけ出し、再生させることで収益性を高めています」

具体的な例として挙げられたのが、築110年超のオフィスビルを再生させたプロジェクトだ。このビルは購入時、賃貸テナントが半分しか入居しておらず、一部の水道設備も機能していない状況だった。しかし、再生プロジェクトを通じて新たな入居者を引き付け、賃料の水準を大幅に引き上げることに成功したという。

「誰がこの物件で事業をしたいのか、どのような入居者がこの物件での事業に価値を見出すのかを徹底的に考え、適切なターゲットにアプローチしました。その結果、価値のある物件として再び市場に登場させることができました」

成長を支える理念——「お客様の価値創造」が第一の使命

2024年11月7日、レーサムはヒューリック株式会社のTOB(株式公開買付)によりヒューリックの連結子会社になった。レーサムの資産規模は2025年時点で約1,300億円であるが、ヒューリックはその18倍に相当する規模を誇る巨大企業である。しかし買収後も、レーサムはこれまでの独自の視点をもった、そのビジネスモデル自体の成長を期待されている。
「レーサムでは、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、個人の力を高める『一騎当千の個の力』を重視しています。また、多様な個性や専門性を持つ社員が共通の目標に向かって協力し合う『異体同心のチームワーク』も大切にしています。変化の激しい社会、そして不動産業界において、迅速な意思決定と行動を可能にする圧倒的スピード感はレーサムの大きな強みです。社員数は100人程度ながら、少数精鋭の組織で2024年には売上約1000億円、営業利益約230億円を達成しています」
レーサムの根幹にあるのは、このような「挑戦する姿勢」と「顧客価値を追求する文化」だ。

「レーサムでは、自らが価値を創造したと自負することでなく、お客様に『レーサムの不動産で価値を得られた』と感じていただくことが重要です。ただし、その価値は時代や市場の変化によって変動します。そのため、私たちは常に未来に視点をおき、未来の市場で求められる価値を見据えて行動することを意識しています」

“相場”を疑い、リスクを恐れず、新たな価値を創造する

さらに、従来の枠組みにとらわれない斬新なアイデアを活かし、不動産の価値を最大化する「予算に縛られない自由な発想」もレーサムの特長である。
「相場はあくまでその時点での指標、そして人の保守的な思案の集積にすぎません。それを超える価値をどう生み出すか、未来にどのように繋げていくのか、それが私たちの使命です。そのために、時には市場の一般的な見解に反してでも、自信と実感を持って行動する必要があります。これからの世の中、知識だけでは何も進まず、実感を伴った知識、即ち『実感知』が価値創造の礎です」

レーサムでは、柔軟な思考と独自の視点を持つ人材を求めている。
「私たちは不動産の専門知識だけでなく、社会の動向や顧客ニーズを幅広く理解し、即座に行動する人材を歓迎しています。新しい視点を続々と実感知として取り入れることで、さらに革新的なプロジェクトを生み出していきたいと考えています」
レーサムでの仕事は、不動産を通じて社会的な価値を創出する挑戦の場ともいえる。そのプロセスを支えるのは、社員一人ひとりが自らの成長に素直に挑戦しようとする熱意だ。
「築古物件を再生させるプロジェクトは、一筋縄ではいきません。しかし、それを乗り越えることで得られる達成感と、社会に与えるインパクトはとても大きいです。私たちと一緒に新たな価値を創り上げる仲間をお待ちしています」

レーサムは、不動産の潜在的な価値を引き出すことで、顧客にとっての「安定した資産」と「価値創造」の両立を実現している。その成功の裏には、市場の常識にとらわれない挑戦と、顧客志向の理念がある。