「現時点での一時的な家賃・収支でその不動産の価格を計算しない」

これは当社が不動産の価格検討をする際に必ず注意する点です。

不動産投資のミソとも言える点ではありますが、我々は長期的視点に立ち、過去の収支のトレンドを丁寧に紐解くと共に、将来のテナント家賃や不動産の収支を見極め、その不動産の本質を把握した上で価格を検討しています。

その見極めのために、例えば将来のテナントについて、

相場賃料・平均坪単価・成約事例といった客観的データの収集にとどまらず、本当にその物件に入居するテナントがいるか、どういうテナントがどういう市場分析や収支計算に基づいていくらで借りるのかを、事業者に個別に直接取材していきます。

そしてその担当者の実感を伴った「Aという事業者がいくらで賃借したい(と言っている。何故なら…)」という調査結果が、客観的データや一般論を超えて今まで隠れていたその不動産の価値を浮き彫りにしていくのです。

仮に現状より高い賃料を支払える事業者に出会えた場合、現テナントが退去し切替えが達成できるならばその隠れていた含み益を顕在化することが出来ます。

一方、取材の結果、現テナントの賃料が一番高いことが明らかになれば、万一現テナントが退去した場合の賃料のダウンサイドを実感を持って把握できていることになります。これによりその不動産の含み損を認識し価値を見誤ることなくリスクをマネージできるのです。

こういう活動を地道に積み重ねていくことで、現状に隠れたる潜在価値を見つけ、その不動産の本当の価格が見えることにつながっていくのです。

含み益という”宝物”を見つけられた事例は、プロジェクトページに掲載しております。是非、ご覧ください。

【Column~含み損の調査事例~】
銀座の中央通りに面するあるビルを想定していただこう。1 階には坪単価6万円でテナントが入居しています。一方、当該物件に近い別のビルではブランド店舗が1階を坪単価10 万円で賃借していました。近隣にそうした事例があるため、売主や仲介業者は当該物件のテナントの退去後は坪単価10 万円で入居してくれるテナントが見つかると踏み、アップサイドを見越したセールスを仕掛けるのです。
だが我々の調査結果は全く異なっていました。
当該物件に限定して徹底的に調査したところ、現在のテナントが退去したら坪単価6 万円から坪単価5 万円に下がるとの結論になったのです。坪単価10 万円を払っているブランド店舗に所有者として会いに行くと、中央通りに面した壁面部分を広告に使用できたため広告効果として坪単価5 万円程度のバリューを織り込んでいたことを教えてくれました。同店舗の商品はいずれも高単価であり大量販売していないため、マスメディアで広告するとむしろブランドイメージが低下してしまうことを懸念しており、中央通りの視認性の高い壁面を看板に利用することに予算を投入して効果的な広告を図っていたのです。壁面で比較すると当該物件の魅力は薄く、入居するなら単に床に支払う坪単価5 万円が限度とのリサーチ結果になりました。よって現在のテナントが退去した場合には、次のテナント賃料は坪単価5 万円になってしまうのです。この結論は、当事者としてそこまでマーケティングしないと辿り着けないものです。

因みに、当社の入社数ヶ月の若い社員が神奈川県のある駅からやや離れたロードサイドの区分店舗を検討している事案を紹介しましょう。

対象物件は最寄駅から2km以上も離れており、その若い仕入担当者も当該エリアは閑散としており大丈夫かなと、賃料査定も坪単価10,000円でも精一杯と思っていました(下記は当該エリアの写真。)

仕入担当が現地調査に行ったときは閑散としていた対象エリア

しかし、この地域ではさらに奥には住宅地がひかえており、交差点の先にあるターミナル駅に向かう通勤者等が非常に多く対象物件の前の歩道を利用していたことに気付いたのです。実際にその歩道の通行量調査を行った結果、平日の日中で1時間当たり平均800人が行き来し、そのうち15人に1人の割合で、現在入居しているテナントを訪れていることが分かったのです。ちなみに、道路を挟んで反対側の歩道は、商業地の末端にあるため通行量は少なく、対象物件側の歩道との通行量差はなんと5倍近くにもなったのです。(下記資料ご参照。クリックすると拡大します。)

そこで、将来のテナント像を検討するに際し、
スーパーやドラッグストアは通常売上の5%程度が賃料負担可能額と経験的に認識しているところ、その背後にある住宅街に着目し、半径500m以内に8,000を超える世帯があることから、立地の優位さから売上の6%程度までであれば賃料負担可能であろうと、即ち月額想定売上1800万円から算出すれば坪単価15,000円が上限になるであろうと想定。(近隣人口・世帯数の状況については下記資料ご参照。クリックすると拡大します。)

一方、来客数がその店の売上を左右するといわれるコンビニエンスストアでは、その交通量から逆算される店舗の賃料について、当該立地において通勤者を主な対象として毎時800人以上の通行人がいること及び既存テナントが通行人15人に1人を集客出来ている実績から坪単価30,000円でも出店したい事業者は現れると想定。実際に各事業者にヒアリングしたところ、ある小型スーパーより、坪単価30,000円ででも積極的に出店検討したいとの申出があったのです。彼らの店舗開発部隊の出店検討に上記の我々の想定を話したところ、彼らもその想定の根拠の正確さに目を丸くしていました。

一般的な査定方法では、近隣の事例調査を行い、隣のレストランが坪単価19,000円、もう少し離れたコンビニは坪単価12,000円であることを突き止めたので、それらとの比較において、対象物件は坪単価20,000円ですら難しいだろうと査定します。しかしながら、既存店舗の賃料に目を奪われてはいけないのです。我々は、対象物件をつぶさに見つめ、坪単価30,000円のテナント像、すなわち含み益を見つけ出しているのです。(近隣の事例調査は下記資料ご参照。クリックすると拡大します。)

当社では、対象物件が背後に抱える人口とその変遷のみならず、週末も含めた店舗前道路の通行量調査までを自ら行い、まるで流通業の店舗開発チームからコンサルティング契約を受託して、市場調査をしているレベルのことを不動産を仕入れる部署の若い社員が行っているのです。