不動産を用いた一般的な相続税対策では、「時価」と「相続税評価額」の乖離が大きく、価格が安定的な不動産を保有することが得策とされています。「相続税と不動産投資」でお示ししておりますとおり、不動産の相続税は、時価ではなく相続税評価額を基準として算出されるからです。

上述の件は多くの方々が理解され実践されていますが、その相続税対策用に購入した不動産において生じる家賃等による収入の増加も相続税対策では一体不可分で検討を欠くことのできない事項です。すなわち、家賃等の現金収入が被相続人に溜まってしまったため相続財産が膨らみ、結果的に支払相続税が増えてしまうことが有り得るのです。

例えば、現金1億円を資金に時価1億円(相続時の推定相続税評価額5千万円、賃貸事業収益に対する利回り6%)の物件を購入できたが、その後20年以上保有し続けた場合、賃貸収益が20年間で1億2千万円発生しており税引後でも6000万円の現金が手許に溜まり、この現金はもちろん課税対象となってしまいます。これでは、現金での相続より相続税が増えてしまうことになってしまうのです。

相続税対策のためにと安易に不動産を購入してしまうと、結果的に増税となってしまうケースもあるのです。

賃貸収益が溜まったことにより、その分財産も増えたから良いのではという考え方もありますが、その賃貸収益は一定の割合でご子息などの被相続人に移動していたりした場合には、それは相続財産の対象外となるのでより有効になり、そのインパクトは実は非常に大きいのです。個人の場合には長期運用が前提となるため、このインパクトについては当然の如く検討しなければならないのに、初めて相続対策をする人の場合、そこまで考えていないケースが非常に多いのです。よって、保有期間中のその不動産のキャッシュフローも相続税対策を検討される場合には考慮すべき重要な要素になることを我々は認識しており、賃貸収益をご子息に効果的に送るスキームも利用した相続税対策を提案しています。

また、その応用編で、相続目的で法人を設立し、その法人が不動産を購入するために被相続人が資金を融資した場合、その融資回収スピードによっては、その法人における相続税対策が甘くなってしまっていることもよく見られる事象です。

下図のように、新設法人に不動産を所有させ、その法人の株式を一定期間保有後に子供に贈与させます。その場合当該不動産は相続税評価額で評価されるため、株式自体を備忘価格程度の価格で譲渡することができることを利用して節税対策を行っているケースを最近多く見受けられます。

さらに、その会社自体は不動産のみを保有するにとどまり、他の収入もないため、設立間もない頃は金融機関から融資を受けることが難しいのが一般的です。また市況の変化によって金融機関の融資姿勢が極端に変わることをリスクと捉え、金融機関からの借入は使用せず、ご自身がその法人に貸付をしているケースも散見されます。その場合、株式を子供に譲渡した段階においても貸付は継続しているため、その金利分を考慮する必要があります。即ちご自身はその法人から金利を受け取るため、その金利分だけ資産が増加し、結果的に増税になってしまう可能性を検討しなければならず、不動産を買っても節税にならないケースもあるのです。
それを踏まえた上で、利息を安く設定させることでその法人に賃貸事業利益が多く残るようにさせておき、更に孫への相続にも対応出来る仕組みを整えておくことで、第三者からの借入が無く安全で、長期的にも相続対策は十分だと考えている人にも出会いました。

しかし、これが実は最悪の相続税対策だったことに気づくのは、予定通り対策を済ませご本人が亡くなったときでした。

一見十分勉強された上で完璧な対策を講じられたようでしたが、実は相続税増税対策となっていたのです。尚、ここでは何故増税になってしまうのかについては計算が複雑なため詳細を割愛します。

我々はこういう事例を把握し研究することで、「ある一定の要件を満たした不動産を利用し、且つ設立する法人の所有形態を変更する」ことによって、金融機関の融資無しに対応出来るソリューションを生み出しています。ここでは長くなってしまうので詳細は割愛しますが、この仕組みは予め不動産を買う前から準備しなければ実現はできないということには注意が必要です。