日本では、高齢化と人口減少が加速する見通しが昔からわかっていたにもかかわらず、今なお先進国の中でも新築の不動産の供給が目立っており、不動産の余剰問題は深刻です。これら日本の不動産ストックをどう活用していけるのか。その一部は、山など自然に返さなければならないでしょう。放っておけばスクラップの山を生み、街の衰退につながり、その社会的影響もますます大きくなります。

私は大量供給モデルからの脱出を胸に、バブル崩壊の年、1992年に当社を設立しました。当時建物は、古くなったら壊し、土地に付着している余計なものという考え方が、業界においても金融の評価システムにおいても支配的であったため、まずは築古でテナントが付いている物件が正当な価格で取引される市場を創り出すことに集中しました。

特に、金融の担保評価システムを乗り越えるため、日本で初めて多数の債権(ローン)を銀行からまとめて買い取り、その担保である不動産を流通させました。また、正常な所有状態にある国有財産であっても、築古でテナントが付いている物件は流通しませんでした。私たちは多数の国有不動産をまとめて買い取り証券化して売るビジネスを日本で初めて実現しました。

このようなビジネスは当初の数年間、競合が無く大きな利益を生み出しました。そして当社はこの分野で上場した初の会社となり、収益性も高かったため注目も集めました。その後、多くの競合会社が生まれ今では築古のテナント付きの物件は「投資用不動産」という括りで一般的に流通するようになり、私たちのようなビジネスは不動産流動化ビジネスと呼ばれるようになりました。まさに設立の思いの一部分は叶ったと言えます。

業界の習慣や金融の評価システムは、常に時代の後から変化していくことも肌で学びましたが、取引する場が生まれたことにより、不動産ストックの質的転換にフェーズを移していきます。

私たちは、極端に古くなった都心の大型複合ビルに残る多数のテナント移転の問題解決や、最先端の技術を駆使した大規模改修、耐震補強に取り組みました。同時に、時代の変化を予測し、同一物件の用途を変えて新しいテナントを誘致することにも取り組みました。前例が見当たらず、私たちが取得する時点では改善にかかる時間やコストを見積もることが出来ませんでした。しかし、レーサムは「何のために」あるのかという気持ちを強く持ち、困難な案件に次々と取り組みました。
都心の大型オフィスビルを屋内園庭や運動場のある大型保育園にし、銀行の支店をコンビニエンスストア、ガソリンスタンドを飲食店、ビジネスホテルをコミュニティ型ホステル、ゴルフ場に温泉を掘りリゾート化し、京町屋を高級宿泊施設へ転換するなど、その他数え切れない用途の組み替えを行ってまいりました。世の中の変化に追いつかない建物の用途や法的未整備を、真面目に1つ1つ克服しました。そのことにより物件価値が飛躍的に高まる沢山の実績を積み上げています。

お客様の立場に立ったとき、トラックレコードが十分あって予想しやすく整理された投資商品ほど、時代変化に対応できずに中長期リスクが大きくなってきます。未来に対する商品開発は、新しさゆえにリスクが高く見えますが、むしろリスクをマネージすることになると考えています。具体的には、若者が減少する日本に世界中の若者を集め地域をつなぐコミュニティ型ホステルの運営、高齢化で増加する病気に対応できる専門病院の開発、歴史的価値のある古い建物を観光資源として再生する事業などです。

私は「人はより良い自分になるために生きている」と信じています。だからこそ思い込みの殻から抜け出し、新しいアイデアを次々と実現していくことで、一人ひとりの可能性を拓いていきたいのです。今後ともご支援賜りますよう心よりお願い申し上げます。

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2017年4月
代表取締役社長 田中 剛